画像形式-2


引き続き、ベクトル画像とビットマップ画像について、それぞれの特徴を主に、長所・短所、使用上の適否と言った切り口で見て行きましょう。


 

 

画像データ形式の特徴

■ ベクトル画像形式-数式、テキストでの定義

前頁で見たようにベクトル画像はテキスト形式データです。それによる特徴・効果など。

座標を理想空間に定義

数式、テキストで定義しているベクトル画像の利点として、座標を理想的な仮想空間に定義出来ることです。従って「データの精度」は理論上無限に高めることが出来ます。
その結果として、前項で見たように、データを出力(プリントアウト)した際、その出力デバイスの最高精度で出力してくれるのです(後述)。

データ量と物理メモリとの相関関係が無い

データそのものの大きさと、そのデータが表している物理量との間に、全く相関関係が無いという特徴も有ります。
どういう事かと言うと、「1メートルの線分」と「1キロメートルの線分」とを比較した場合、その表している物理量は1000倍の違いが有ります。しかし、データ量(メモリ)は16バイト(8文字)と20バイト(10文字)で、その差はシステム上全く問題となりません。
つまり「言葉」では、どんな大きなことを定義しても、その分メモリが膨らむ、と言うことは無いのです。「口だけならどんなでかいことも言える」のですね。

ビットマップデータでは、1000倍の量を表す為には、実際に1000倍のメモリ領域を必要とします(圧縮と言うことを考えないとして)。

ベクトル画像のファイルサイズ

ビットマップ画像のファイルサイズが 、基本的にピクセル総数とそこに適用されているカラー値に比例しているのに対し、ベクトル画像は「オブジェクト」の数とその複雑度に比例するのではないかと思われます。「テキスト」で定義されているベクトルデータでは、画像の複雑さがテキストのボリュームに反映されることになるでしょうから。

ビットマップでは、どんなに入り組んだ画像であっても、白一色の画像であっても、同一解像度、同一面積なら、使用されているピクセル数は変わりません。「圧縮」を考慮しない限り、ファイルサイズは同じです。。
そしてビットマップが、基本的にはファイルサイズを計算できるのに対し、ベクトルは、予め予測することが一寸できません。
ただ 殆どの場合、ビットマップに比べ、テキストファイルで有るベクトル画像のサイズは、大幅に小さいのが普通です。

出力解像度を考慮する必要が無い

数式で定義されているベクトルデータを、モニタやプリンタ等、出力デバイスで出力した場合、各デバイスはその数式を解釈し、そのデバイスの最高解像度で表示、印刷します。

ビットマップデータとの比較で考えて見ます。
Photoshop等、ビットマップソフトで、Web用に72ppiの画像を作成したとして、その画像を360ppiのプリンタで印刷しても、あくまで72ppiの画像品位でしか出力できません。それだけの情報量しか持っていない訳です。360ppiの印刷品位を得たかったら、最初から360ppiの解像度で画像を作成する必要が有ります。
かといって、では最初から360ppiで作っておけば良いかと言うとそう言う訳にも行きません。72ppiと360ppiでは、メモリサイズで 25倍(平方では二乗となる)も違い、画像作成も表示も重くなります。
逆にデータ解像度を高く設定しても、出力デバイスの解像度が低かったらデータの解像度を生かせません。
又モニタやプリンタ等、同じ解像度で表示・出力したとき、画像の大きさが違って来ます。

ビットマップは基本的に、意図する出力解像度に合わせた解像度で、画像を作成する必要が有ります。常に出力時の環境を意識してデータ作成する必要が有るわけです。

ベクトルソフトは、そう言うことに気を使う必要は全く有りません。と言うより基本的に「解像度」と言う考え方が有りません。
前述のように、数値で定義されているベクトルデータは、 デバイスがその数値を解釈し、各デバイスの最高解像度に合わせ、表示、プリントしてくれるのです。
ですから同じ画像ファイルで、72dpiのモニタから、オフセット印刷の高解像度機器にも対応できる訳です。

又これも前述したように、A4サイズで作った画像をA0サイズでプリントしても画像が荒れると言う事が有りません。
ただ、高解像度且つ大判で 出力するには、当然それに耐えるだけの精緻な画像を用意する必要が有りますね。大きなサイズで出力すれば、その分細かなアラも目立ちます。従来のTVでは目立たなかった小じわが、ハイビジョンTVのアップでは目立って、出演が出来なくなったベテラン女優のケースを考えれば分かると思います。

 


 

ラスタライズ

ベクトル画像であっても、モニタ表示、プリンタ出力の際には、データを一旦ビットマップに変換する必要が有ります。 と言うのは、モニタにしろプリンタにしろ、出力はドットによるビットマップ出力だからです。
数式によるベクトルデータを、デバイス解像度に合わせた、ドットマトリックスに変換する、この作業を「ラスタライズ」と言います。

プリンタでのラスタライズの方式に二通り有ります。

  • ポストスクリプトプリンタ
    プリンタにラスタライズの機能を持たせる方式。
    プリンタにハードディスクやフォントを付属させる必要が有り、又ポストスクリプト言語が、Adobe社のライセンス供与と言うことも有って、価格が高くなるが、PC本体に負担をかけないので、印字スピードが速くなり、印刷品位も高い。
  • 非ポストスクリプトプリンタ
    インクジェットプリンタ等、一般コンシューマ向けは大半この方式。
    PC本体にラスタライズの機能を果たさせる方式。プリンタ価格は安く上がるが、印字スピードは遅くなる。 ただ 、最近のインクジェットプリンタ の印刷品位向上は目覚しく、画質だけで言えば殆ど遜色は有りません

ベクトル出力

パソコン関係の出力デバイスは殆どラスター型です
しかし数は少ないがベクトル型出力デバイスも有ります。製図関係で使われている「ペンプロッタ」は、ベクトル型出力です。

■ ビットマップ画像とベクトル画像、それぞれの特徴

このサイトはIllustratorのサイトでも有り、ベクトル贔屓の記述になりました。

ここまで読んで来て、ビットマップには取り得が無いように思った人も有ったかも知れませんが、勿論そんな事は有りません。達人が高解像度で書いたビットマップ画像は、素晴らしい物です。
ピクセル単位で編集の出来るビットマップは、微妙な陰影や質感を表現でき、一見写真と区別が付かないような作品が出来ます。勿論写真の編集 (フォトレタッチ)はビットマップソフトの独壇場です。

それに対しベクトルは、輪郭のはっきりした(いわゆるエッジの立った)画像に適しています。
ロゴマーク等はIllustratorの受け持ちです。

「使用目的に合わせ使い分ける」と言う 月並みな言葉で、この項を終わりとします。


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