Illustratorとフォント、特にOpenTypeフォント


バージョンCSから最新のフォントフォーマットであるOpenTypeフォントに対応できるようになりました。
この点も又、Illustratorの優位性を特徴づける機能と言えるでしょう。


 

 


 

フォントの種類

ビットマップフォントとアウトラインフォント

フォントを大きく分けると、「ビットマップフォント」と「アウトラインフォント」に大別できます。

ビットマップフォント

文字の形を小さな点(ドット)の集まりで表現しています。
高速処理可能で、モニタ表示用としてのスクリーンフォントとして使用されますが、拡大・縮小によって形が崩れるので、必要に応じ、それぞれのフォントサイズのものを用意しておく必要が有ります。
現在DTPには使われないし、殆ど考慮する必要はないでしょう。

アウトラインフォント

文字の形を数式により表現します。つまりベクトルデータを持ちます。
拡大・縮小も数式により再計算・表示されるので精細度が維持されます。DTPを含め、現在使用されるフォントは殆どこれです。
ベクトルデータであるアウトラインフォントも、モニタ表示やプリントアウトの際にはラスタライズ(ビットマップ化)されて出力されます。ベクトルデータをそのまま出力するデバイスとしては、ペンプロッタが有ります。

アウトラインフォントは、その仕様によって主に次の3種類が、パソコンとIllustratorに使われています。

アウトラインフォントの種類

現在使われているのは殆どアウトラインフォントだけです。
実際にコンピュータで使われているフォントフォーマットは、TrueTypeフォントPostScriptフォント、そしてOpenTypeフォントの三種類です。その中で今後、重要になってくるのはOpenTypeフォントでしょう。

TrueTypeフォント

次に挙げるPostScript フォントに対抗、と言うかAdobe独占を嫌って、1989年、Apple社とMicrosoft社が開発したフォント形式。2次ベジェ曲線によって定義されている。
OS(Mac,Win) のシステムフォントとして、両OSパソコンに最初から相当数インストールされている。価格も安く種類も豊富。
アウトラインフォントだから表示はキレイだが、問題点も有る。

問題点

Mac、Win間で互換性がない。
元々開発はApple社が開発してMicrosoft社に技術供与されたものだが、Microsoft社独自の開発部分も有り、Mac-TrueTypeと、Win-TrueTypeの間に互換性がない。この点が最大の問題点。Mac用、Win用と分けて市販されているのもこの理由による。ただMac OS Xの登場で、Mac側からはWin-TrueTypeを使えるようになった。

更に印刷会社側でTrueType フォントを持っていないと言う事情が有り、印刷会社にデータを渡す時には、フォントのアウトライン化が必要になる場合がある。

PostScriptフォント(Type1 フォント)

1985年、Adobe社によって開発されたフォント形式。同社開発のPostScript(ページ記述言語)を元に、三次ベジェ曲線によって定義される。主にMacで使用されDTPの起爆剤ともなったフォント形式。

当時、このPostScriptフォントと、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)によりWYSIWYG(ディスプレー表示と出力内容を一致させるインターフェース技術)を実現していたMacパソコン、及びMac上で動く初めてのページレイアウトソフト-PageMaker(アルダス社開発、後にAdobe社に買収)、そしてPostScript言語を搭載したApple社のページプリンタ(LaserWriter)の組み合わせによって、いわゆるDTPの誕生、その後の爆発的隆盛となった。
DeskTop Publishing(DTP)という言葉も、アルダスの社長であったポール・プレナードが初めて使ったのだそうです。

Mac側にスクリーンフォントとしてのビットマップ、プリンタ側にプリントフォントとしてのアウトラインのPostScriptフォントをインストールすることで、WYSIWYGのモニタで仕上がりを確認しながら、高精細な印刷が可能になった。

PostScriptフォントにはOCFフォントと、その後継であるCIDフォントがあり、OCFフォントは現在既に販売されていない。
CIDフォントは次に述べるOpenTypeフォントが発表された現在でも、Mac OS 9.2以前、及びClassic環境で使われている。
Win環境では殆ど使われていない。

問題点

画面表示用のスクリーンフォントと、PostScriptプリンタなどの出力機にインストールするプリンタフォントが必要で、一対で使用するのが基本。TrueTypeフォントと比較して、一般に価格も高い。
PostScriptプリンタも高価。

OpenTypeフォント

Adobe社とMicrosoft社の共同開発による最新のフォントファイル形式。TrueTypeフォントとType1フォントを統合。
TrueTypeとPostScriptのフォントの持つ問題点を、ほぼ完全に解決。

Unicode(ユニコード)準拠

Unicodeを一言でいえば、「世界標準&世界共通の文字コード」でしょう。特定の言語によらず幅広く文字を集め(文字集合)、特定のプラットフォームやプログラム言語に依存しない形で、固有の番号付けしたモノです。

Unicode準拠によって、OpenTypeフォントは次のような特徴(優位性)を持ちます。

  • クロスプラットフォーム対応
    Unicodeに対応しているシステム(OS、アプリケーション等)上で、クロスプラットフォーム的に互換性が保持されます。MacとWinで同じフォントを使うことが可能となり、いわゆる「文字化け」が発生ません。

  • 収納文字数の大幅増加
    Unicodeは理論的に100万以上の文字を表現することが可能で、世界の主要言語の殆どの文字を収録しています。
    そのうち例えば現在市販されている日本語OpenTypeフォントは、4種類の規格が有り今現在で最大23058の文字数を収録しています(下記参照)。従来のフォントが約8000文字であることと比較して最大2倍半以上です。
    これにより、漢字異字体の多くを収録するとともに、記号や絵文字、公共用のマーク、及び数式や化学式などにも広く対応できるようになりました。
    OpenTypeフォントの仕組みとしては65,000文字まで増やすことが可能だそうで、さらに文字数の多いフォントが作られていくでしょう。

ダイナミックダウンロード

従来のPostScriptフォント(Type1 フォント)と違い、出力側へのフォントインストールを必要としない(プリンタフォントが必要ない)。パソコン側にインストールしておくだけで必要に応じてプリンタ側に、フォントデータがダウンロードされる。
出力解像度無制限で、デザインから印刷用の高精細出力まで、1つのフォントファイルで全て対応可能となります。

OpenTypeフォントの問題点

対応しているアプリケーションが未だ限られている。
InDesign、Photoshop、Illustratorの最新バージョンではほぼ完ぺきに対応しているが、Word等は一部対応に留まり、OpenTypeフォントの豊富な機能を完全に生かすところに行っていない。
しかし今後急速に普及が予想され、特にIllustratorを使っているのであればOpenTypeフォントを使ってゆくべきでしょう。

 


 

 


 

IllustratorとOpenTypeフォント

上記したようにIllustratorはOpenTypeフォントにほぼ完全に対応しています。その辺の確認と可能性を探ってみます。

フォント選択・字形確認

書式メニューによるフォント確認

「書式→フォント」で、上記フォントの種類と、実際に表示されるフォントの形を確認できます。
それぞれのフォント名の頭に、フォントの種類を示すアイコンが表示され、それぞれのフォントは実際にドキュメント上で使われる通りの字面で表示され、より直感的に理解可能です。
文字パネルでフォントを選択することもできますが、文字パネルで表示されるのはフォントの名前だけです。

下図はWindows環境でのIllustratorバージョンCS5でのものです。

「書式」フォント選択

  • バージョンCS迄は、「文字→フォント」
  • バージョン10迄は、フォント名が表示されるだけで、実際の形を確認することはできません(下図はバージョン10)。

バージョン10

OpenTypeフォントの拡張性

OpenTypeフォントの規格

OpenTypeフォントは、TrueTypeフォントを発展させ、PostScriptフォントのデータ形式も内包出来るように、両者を択一してフォントを作ります。
TrueType形式ベースとPostScript形式ベースの2種類があり拡張子も異なります。TrueType形式由来のものは「.TTF」もしくは「.TTC」、PostScript形式由来のものは「.OTF」となります。
一般にOpenTypeフォントと言った時、PostScript形式ベースの方を指します。

日本語OpenTypeフォントの文字セットには「Std」、「Pro」、「Pro5」、「Pro6」の4種類があり、それぞれ収録文字数(グリフ)が違ってきます。
Stdは9354字、 Proは15444字、Pro5は20317字、Pro6は23058字を収録しています。

字形パネル

Illustratorの「書式→字形」、或いは「ウインドウ→書式→字形」で表示される字形パネルで、フォントの違いによる拡張性を確認してみましょう。
下図は、OpenTypeフォントである小塚ゴシックの、Pro6ProStd、及びTrueTypeフォントのMS ゴシックでの比較です。

※ 小塚ゴシック、小塚明朝はアドビ社の開発で、Illustratorに標準搭載されています。新しいバージョンのIllustratorをインストールすると自動的にこのフォントもインストールされます。
MS ゴシックは言わずと知れたマイクロソフト社のフォントで、Windowsパソコンには標準で添付されています。

OpenTypeのProとStdが有った場合、Proを使うことで幅広い拡張性を活用できる訳ですが、データ交換の際、相手側がStdしかなかった時に不都合が生じることが有ります。適宜使い分ける必要が有るでしょう。

字形パネル

  • 左図「字形」パネルを見て分かる通り、同じ「0」でも、Pro6とPro、Stdで、異字体のバリエーションの違いを確認できます。
    つまりそれだけ収録文字数に差が有ると言うことです(Pro6の場合、「何でもかんでも突っ込んでおけ」って感じがしなくも有りませんが)。
  • TrueTypeのMs ゴシックに至っては異字体の表示そのものが有りません。
  • 「表示」オプションで表示されるサブメニューは、Pro6、Pro5、Proでは共通ですが、Stdでは選択肢が少なくなり、MS ゴシックでは更に少なくなります。

異字体の選択・変更

字形パネルの〈表示〉を「現在の選択文字の異字体」に切り替えて、ドキュメント上の字体の変更が出来ます。

字形パネル選択文字

OpenTypeフォントの編集

<OpenType>パネルで、OpenTypeフォント固有の操作、編集が出来ます。

オープンタイプパネル

全ての OpenType フォントが対応している訳ではない。

OpenTypeフォントが全て、この豊富な機能に対応している訳では有りません。どちらかと言うと未だ一部のフォントに限られるようです。以下は、「Adobe Caslon Pro」フォントを使っての検証です。
私もこの操作をするまで、全く意識していなかったのですが、このフォントもIllustratorに付属して自動的にインストールされたものです。
この、Adobe Caslon Pro フォントにしても、上記欧文用の操作メニューの中で「前後関係に依存する字形」「デザインのバリエーション」「タイトル用字形」には、今のところ未対応のようです。
幾つかのOpenTypeフォントで試してみましたが、試した範囲では見つかりませんでした。

※ Illustrator CS5でインストールされるフォント

単体製品の Illustrator CS5 に付属するフォントリストです。

欧文フォント用設定メニュー

上記したように全てのOpenTypeフォントが、全てのメニュー項目に対応している訳では有りません。
Adobe Caslon Pro フォントを使って、対応している項目だけ検証してみました。

欧文合字

合字とは、幾つかの文字を結合し、一つの文字としたもの。活版印刷では専用の活字を作ったり、デジタルフォントでは独立したコードを与えるなどして表現します。
OpenTypeパネルの欧文合字機能では、 「f+i」「f+f+i」等、フォントに含まれているデータをもとに標準的な合字を作成します。
欧文合字

欧文合字

任意の合字

標準的とは言えない合字を作成します。(下の例では、ffの合字も一緒に適用になっています)
任意の合字

任意の合字

スワッシュ字形

装飾的な字形に変換します。同じフォントで有りながら全く違う字形(異字体)になります。
イニシャルキャップ等に使えるでしょう。
Adobe Caslon Proでは、Italic体が対応しています。字形パネルで確認できます。
スワッシュ字形

スワッシュ字形

字形パネル

上付き序数表記

序数を上付きにします。
上付き序数表記

序数

スワッシュを用いた分数

分数に変換します。
スワッシュを用いた分数

分数

和文フォント用設定メニュー

和文フォントで検証してみましたが、欧文フォント程には「劇的」な変化は感じられませんでした。
試用したフォントは「小塚明朝 Pr6N-R(レギュラー)」です。

オリジナル文字列

オリジナル文字列

プロポーショナルメトリクス

フォントに埋め込まれている情報を元に、自動的にカーニングされます。字間が調整され、文字列が若干短くなります。
プロポーショナルメトリクス

プロポーショナルメトリクス

横または縦組み用かな

縦組み又は横組み用の字形に変換します。(少し水平が強調されるようですが、あまり変化を感じない)
横、縦パネル

横、縦文字列

欧文イタリック

文字列中の欧文をイタリック(斜体)に変換します。学名表記が混在している文章の記述に便利かも
欧文イタリック

欧文イタリック

文字スタイルオプション

「文字スタイル」パネルのサブメニュー(右肩の▼をクリック)で開かれる、「文字スタイルオプション」パネルでも、同じ操作が出来ます。重複しますので説明は割愛します。

文字スタイルパネル


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