減法混色と印刷


減法三原色と減法混色の基本的な考え方については、前ページで述べました。 透過光による減法混色の典型は映画・スライドなどでしょうが、反射光による減法混色の 具体的な適用として、最も一般的で重要なものは「カラー印刷」でしょう。
ここでは減法三原色(CMY)・減法混色と、カラーインク、カラー印刷との関係について考えて行きましょう。

なお、印刷の技術的な問題そのものについて、管理人は門外漢です。正確で詳細な情報は専門書、サイトを参照して下さい。


 

■プロセス印刷

カラー印刷の主流はオフセット(平板)印刷ですが、その基本的な仕組みは「プロセス印刷」と呼んで良いでしょう。プロセス4原色と言われる限られたカラーインクで全ての色を再現しようと言う仕組みです。

人間の眼は、3種類の視細胞で色を識別します。 であるなら、3種類の原色で全ての色を再現しようと言うのが、カラー印刷の考え方であり、方法だと言えるでしょう。

プロセスインク

減法三原色の3色、シアンマゼンタ、イエロー、及びブラック(CMYK)の4色を「プロセスカラー」と言い、この4色を「プロセスインク4原色」と言います。
カラー印刷の基本は、プロセスインクの減法混色による印刷です。

Kインク

原理的には印刷インクも「減法3原色」のC・M・Y3色でフルカラーを生成でき、3色全てを混ぜると黒(Black)が生成される筈です。しかし実際のインクによる混合では、主に技術的な特性上、真っ黒は再現できません。 やや緑がかった黒にしかなりません。
その為、深く締りのある真っ黒を表現する為、ブラックインクを追加して「CMYK」4色で印刷しています。

「K」は「くろ」のKでは有りません。BlackのKです。
ブラックはKeyカラーで有る事、Bの文字はRGBのブルーに使っていること、等からブラックには Kの文字を当て嵌めているのです 。

アミ点

カラー印刷の仕組みの基本は「プロセス印刷」です。
プロセスインクと呼ばれる基本の4原色インクを、アミ点(ハーフトーンドット)と呼ばれる細かい点として配置し、インク同士の減法混色と、それを見る人間の眼の加法混色で、全ての色を表現しようとします。 インクで階調を表現する為に、本来はインクの濃淡を変えてゆく必要が有ります。しかしインク自体の濃度は決まっていて、部分的にコントロールすることは出来ません。
その為、印刷面をアミ点と呼ばれる細かい点の配列・集合で表し、アミ点の大きさを変更することにより、インクと紙の白地との面積比で濃淡を表現します。
アミ点によるインクと白地との比率を「アミ点濃度」と呼び、パーセントで表示します。

flower_amiten.jpg

写真のカラー印刷を拡大したものです(左図)。
細かい点で構成されているのが分かります。これをアミ点(ハーフトーンドット)と言います。

スクリーン線数

アミ点配置の密度が細かいほど、印刷品位も精細になります。
アミ点の密度を決めるのがスクリーン線数です。 1インチ当たりのアミ点配列で表します(上図例では16線数ということになります。 Lineの l を取って、16lpi と表示されることがあります)。
線数が多くなるほど、アミ点は細かくなります。

アミ点濃度

アミ点が細かくなるほど、印刷用紙の白地の割合が増えて、眼には薄く感じられます。
プロセスインクに、白は無く、用紙の白地が白となります。
用紙の白地とインクアミ点との比率をアミ点濃度と言います。

halftone_dot.gif

 

減法混色と加法混色の組み合わせ

カラー印刷は、アミ点における減法混色と、それによって生成された2次色、及び紙の白地との併置的加法混色の組み合わせで、あらゆるカラーを再現します。

cmy_print.jpg

  1. 重なり合ったアミ点が減法混色を起こす(1次色)
  2. アミ点からの反射光と、紙の白地からの反射による併置的加法混色で、眼に色を感じる(2次色)。
  3. アミ点が細かいほど、眼に入る色の組み合わせが多くなる。
  4. CMYだけで出せない黒を、Bインク(3次色)で表現。

プロセス印刷では、紙の上に、1次色のCMYと2次色のRGB、3次色の黒(Kインクが使われる)、及び紙の地の白、合計8色が表現できる。
この色の組み合わせと、アミ点濃度による「併置的加法混色」で、あらゆる色を表現する。

 


 

 

■ 印刷の問題点、話題など

プロセスインクによる印刷の限界

理論的にはプロセスインク、C・M・Y・K 4色の組み合わせで、殆ど全ての色が再現される筈ですが、 実際は色々な制約が有って完全な再現には限界が有ります。

  • プロセス印刷ではアミ点面積の大小で色再現しますが、インクそのものの濃度、厚さは同じです。
  • 濃い色の部分は100%のベタ、薄い色調は細かいアミ点で表現しますが、その範囲内での表現しか出来ません。
  • アミ点の重なりによって、色が濁り汚い発色になる傾向があります。
  • インクにはどうしても不純物の混入が避けられず、物理的に濁りが生じがちです。
  • 「分光分布」で見たように、用紙、インクとも完全な反射、吸収はありえず、誤反射、誤吸収が避けられない。

等など。

特色

プロセスインクの限界を解消する為の、一つの手段が「特色」インクです。
理論上プロセスインク4色で全ての色が再現できる筈ですが、インクの特性上再現不可能の色、再現の難しい色が有ります。 鮮やかなオレンジ、紫、緑など。

プロセスインクで表現の難しい色を補う為に、予め所定の色に調整されたインクのことを「特色インク」と言います。 プロセスインクの代わりに、或いはプロセスインクに加えて印刷します。

dic_color.gif

特色インクの種類と使われ方

  1. スタンダード・インク(基本インク)
    各インクメーカーで大量生産され、品質管理も行き届いている。
  2. スタンダード・インクによる混合
    基本インクの調肉により様々な色を作る。
    インクメーカーにより独自の色見本帖があり、名前と番号、混合割合設定されている。
    DICカラーガイドなどがそれに当たる。
  3. プロセスインクと特色インクの併用
    プロセスインクだけでは表現できない色を表現する為、プロセスインク4版に加え、特色の刷版を加えて印刷。

■ オフセット印刷以外の印刷

カラー印刷の主流は上記、オフセット印刷ですが、その他の印刷方式について、その違いなど、

グラビア印刷(凹版)

インク膜の厚さで濃淡を表現します。 深さの異なる、版の凹部のインクを紙に転写して印刷します。
版はインクの中で回転し、余分のインクはドクターと呼ばれるヘラで拭き取ります。
大量印刷に向き、コクのある表現が得られるので、美術書、写真集、グラフ誌などに用いられる。
オフセット、凸版とはかなり違ったアミ点形状をしています。

凸版印刷

凹版とは逆に、凸部にインクローラーでインクを付着させ、紙に転写します。
最も長い歴史を持つ印刷方式です。

■ インクジェットプリンタの色再現

一般家庭でも至ってポピュラーになったインクジェットプリンタについて、その周辺を考えてみます。

プリンタヘッド

インクジェットプリンタは、アミ点、或いはスクリーン線数という考え方は有りません。
プリンタヘッドのノズルから、計算された位置にインクを噴射します。アミ点濃度の変わりにインク粒子の大きさを何段階かにコントロールして噴出し、濃淡を表現します。

インク粒子が細かいほど微妙なカラー再現が出来る訳で、現在、2ピコリットルと言うような極小レベルが達成されています。
インク粒子が細かくなるほど、dpp、つまりドット・パー・インチの数値は大きくなります。この数値は勿論、印刷の解像度に関係しては来ますが、いわゆる画像のピクセルやオフセット印刷でのスクリーン線数とは直接関係有りません。

又オフセット印刷などと比較して、大きく違うのは「刷版」が無いことでしょう。ヘッドが往復する1ストロークの間に、CMYK(或いはそれ以上のカラー)の全てのインクを同時に、位置と粒子の大きさを制御しながら噴射・配置して行きます。

※ それにしても今のインクジェットプリンタの印刷品位には舌を巻きます。専用の光沢紙に印刷されたものはオフセット印刷と比較しても、遜色ないように感じられます。ハイエンドの機種では充分プロ写真家のニーズに応えられるレベルです。
オフセット印刷などでは、予め刷版が用意されている訳ですが、インクジェットプリンタでは、プリンタヘッドが動きながら、インクを噴出し、計算された位置にインク粒子を配置してゆきます。
インク噴出の理屈については、熱によってインクヘッドに気泡をつくり、その圧力でインクを噴出するとか、ピエゾ素子がどうのとか聞かされますが、あの小さなヘッドが動きながら、粒子サイズをコントロールして、あれだけの正確さと速さで、それぞれのカラーインクを配置してゆく。

コンピュータその物の性能も凄いとは思いますが、小さなこのプリンタヘッドがやっていることは私の想像を超えます。
これが5万円前後のプリンタで実現されているのですから、本当に驚異的です。

ライトインク

インクジェットカラープリンタの中には、CMYKの四色の他に、ライトシアン、ライトマゼンタ のインクを加え、六色で印刷しているものも有ります。
インクでの印刷の場合、印刷濃度の調節はインク散布の密度で行います。
CRTディスプレー等RGBが、光の強度その物を調節出来るのに比べ、インクの濃さその物を変更することは出来ないのです。つまり濃い部分はインクを密度濃く、薄い部分はまばらにインクを配することで 表現します。 その為、色の薄い部分ではどうしても粒状感が出てしまいます。

例えば、うす~い水色を表現するのに、シアンインクをまばらに散布したとします。 するとややもすると、水色と言うよりは、シアンの水玉模様になってしまう訳です。
これを防ぐ為のライトインクです。 なおイエローは、白い紙に印刷する場合、濃度による影響が少ない為、普通ライト イエローのインクは用意されません。
しかし、最近売り出されたEPSON社のプリンタには「ダークイエロー」のインクを使い、7色でプリントしています。これにより、深みの或る黄色が出力出来るのだそうです。

なお、 このライトインクの問題はインク粒子が充分に細かければ、本来必要ない事です。 実際オフセット印刷ではそうですし、インクジェットプリンタでも 今のペースでインク粒子サイズが極小化して行けば,そのうち必要無く なる理屈です。
しかし実際にはインクジェットプリンタで、インク粒子サイズがドンドン極小化して行きながら、インク数も増えて来ています。今ハイエンド機では8色インクが普通になっていますね。

又インクの種類も「染料系」とか「顔料系」とか、メーカーによって或いは機種によって工夫がされ、選択できるようになっています。

■ コンピュータグラフィックスに於けるCMYKモード

CMYKカラーパレット

cmyk_palette.jpg

Illustratorで、カラーモードをCMYKにし、カラーパレットを見てみると パーセント表示で、CMYKそれぞれ100階調が割り当てられています。
このパーセントは、刷版のアミ点濃度を表しているのでしょう。
計算上は100x100x100x100で、1億色のカラーバリエーションが有る事に なりますが、勿論そんな事は有りません。
K(ブラック)は、もともと三原色外のカラーで、技術的な必要から 加えられた色ですし、 それでなくてもCMYK方式は、RGB方式の表示能力にはるかに及びません。

モニタディスプレーなど、RGBの表示は、1ドット・1ピクセル 当たり、3バイト・24ビットの情報量で表示しているのに対し、CMYKによる印刷は4色(又は 6~8色)の決まった濃度のインクを、密度と粒子サイズを調節して混色しているだけなのです。
ですから、ディスプレー上で見ている色を、そのままプリントアウト出来ると思ったら間違いです。
逆にプリンタで印刷できるのに、ディスプレーでは表示出来ない色と言うのも 一部有ります。

カラーモードとファイルサイズ

Illustrator、Photoshop等CGソフトは、各色に一枚のチャネルを割り当てます。つまりRGBカラーモードはチャネルが3枚、CMYKは4枚になります。
従ってファイルサイズと言う点からいうと、RGBモードで作成・保存したファイルよりCMYKモードでのファイルサイズが若干大きくなります。


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