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バージョン9から「透明度(不透明度)」機能が搭載されました。これ自体非常に強力な機能ですが、「透明度」搭載に伴う大きな恩恵として、「不透明マスク」を挙げることができます。
従来はPhotoshop等、ペイント系ソフトで処理してきた機能です。
それがIllustratorで、ここまできれいに処理出来る様になりました。工夫次第で、様々な使い方が出来るでしょう。
不透明マスクは、マスクオブジェクトの輝度(明度)の程度に応じて、マスクされるオブジェクトに対し、1バイト(256)諧調の不透明度(逆に言えば、透明度)を設定する機能です。つまりグラデーションを伴ったマスクが可能です。
実際の活用現場でも、様々なグラデーション画像をマスクオブジェクトとして使うことが一般的ですし、不透明マスクの効果を発揮する為にはそれが一番でしょう。
不透明マスクを実際に作成し、その手順、設定項目等について見てゆきます。
オブジェクトの階層関係は下図のとおりです。
不透明マスク作製の結果です。
楕円周囲のグラデーションがマスクに反映されて、背景に対し、いわゆるフェードイン・フェードアウト効果が実現されています。
作製手順
透明化されるのは「マスクされるオブジェクト」
透明化されるのはあくまでも、マスクされるオブジェクトです。
マスクオブジェクトは、マスクされるオブジェクトに対し、透明度の基準と適応範囲を与えるだけです。
透明パネルとパネルメニュー
透明パネルで、「クリップ」にチェックを入れると、マスクオブジェクトが「クリッピングマスク」の機能を併せ持ち、オブジェクトの輪郭で、被マスクオブジェクトを切り抜きます。
その為、上記作製例のように、マスクオブジェクトの周りを黒で塗りつぶす必要が有りません。言わば「裸」の画像を使って同じ効果を得られます。
パネルでの「クリップ」チェック
左下のマスクオブジェクトを使用した場合、「クリップ」にチェックが入って居ないと右図のようになります。マスクオブジェクトの領域外は、本来マスクの対象外になるからです。
不透明マスク設定前(左図)と、設定後(右図)
クリップ機能が働いて、黒100%の背景無しでも、同じ結果になりました。
黒100%(輝度0)によって、完全に透明化することと、クリッピングマスクで切り抜かれて背景が透過することは、同じことです。
このページの冒頭に述べたように、「不透明マスク」は、バージョン9からの「不透明度」機能の搭載に伴い、実現できている機能です。従って双方とも当然共通性が有りますが、違いも又当然あります。
左図は、楕円画像に対し「不透明度50%」を設定してみた場合です。
不透明度を設定したオブジェクトが、単純に50%分透明になり、背面画像(女性図)がその分透けて見えます。
不透明度の度合いはパネルで自由に設定可能です。
このように重なり合った複数の画像カラーが、混ざり合って見える機能、或いは操作を、Photoshopでは「ブレンド」と言います。
Illustratorの「不透明度」設定は、このブレンドの機能を代行します。
不透明マスクの場合は、上で見たように、「マスクオブジェクト」「マスクされるオブジェクト」「マスクされるオブジェクトが透明になり、透けて見える背景画像」の、三要素の相互関係だと言える訳で、結構複雑な機能・操作と言えるでしょう。
透明パレット」で「描画モード」「不透明度」等を選択できます(左図)。
描画モードとは、複数の画像カラーがブレンド状態になっているとき、その混色状態を規定する計算手法、関数です。
描画モードの違いによって、実際に見えるカラー(最終カラー)は変わってきます。
描画モードの比較
比較(暗) | 乗算 | 焼きこみカラー |
比較(明) | スクリーン | 覆い焼きカラー |
オーバーレイ | ソフトライト | ハードライト |
差の絶対値 | 除外 | 色相 |
彩度 | カラー | 輝度 |
このページの冒頭部分で述べたとおり、不透明マスクはグラデーションに使ってこそ、効果が発揮できます。
以下その応用例を幾つか。
下図、左の2枚の画像を使い、不透明マスクを作成します。
マスクとなる画像の輝度によって、透明度の程度が変わり、前面画像の輝度が低い部分ほど、背面画像の透明度が上がります(下右図)。
右図で不透明マスクが掛かっている部分(上部)が、画面上では白く見えています。
これは用紙の白が、透明を通して見えているのであって、背景にオブジェクト、カラーが配置されている場合、それが不透明度に応じて透けて見えます(下図)。
前面に配置された、上図グレースケールの輝度によってマスクされるオブジェクトの「透明度」が1バイト(256)階調で設定されます。
背景のブラックが、透明度に応じ透けて表示されます。
※ 「虹の描き方」にも不透明マスクの使用例が有ります
JavaScript抜きのトップページ、或いはこの講座ページの右肩にも、不透明マスクを使用しています。
マスクオブジェクトにはグラデーションメッシュを使って、不規則なグラデーションを付けています。
ここまでの作製例では、マスクオブジェクトに全て、グレースケールの各種グラデーションを使ってきました。
しかし不透明マスクのマスクオブジェクトには、カラー画像も使うことが出来ます。
又、クリッピングマスクのマスクオブジェクトには、ベクトル画像しか使えませんでしたが、不透明マスクではビットマップ画像も使うことが出来ます。
最初の作製例と同じ、女性図に対し、カラー画像(リンゴ)で不透明マスクをかけてみました。
しかし不透明度の基準を与えるのは、あくまでもマスクオブジェクトの輝度(明度)だけであり、色相は関係ありません。
従ってマスクオブジェクトにカラー画像を使う意味は無いと言えます。
逆に、グレースケールと違い、輝度(明度)の程度が分かりにくく、不透明マスクの効果が予測しにくくなるでしょう。
同じ女性図に対し、ビットマップ画像(写真)で不透明マスクをかけてみました。
使用する画像にもよるのでしょうが、この場合も余り効果的な結果にはなりません。
ただ、ビットマップ画像を使って不透明マスクが出来る、と言うことは、例えばPhotoshopや、そのプラグインソフト(例えばKPT)などによって作製された、複雑なグラデーションでマスクすることが出来ると云うことです。
使い方によっては効果的な結果が得られるかも知れません。