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ここまで主に、スペクトルに於ける特定の波長域に着目して、加法、減法三原色と、その混合と言う形でカラーの本質にアプローチして来ました。言わばスジ論でした。
ここでは実際のカラーの測定値である「分光分布」に着目してカラーの性質、特に「色彩の三属性(三要素)と呼ばれる基本的な問題を中心に探ってみたいと思います。
スジ論として本来期待されるべき理想的なカラーの三属性と、実際のカラーとのギャップ。或いは減法混色の状況なども分光分布で理解できるかと思います。
マンセルやオストワルトの「表色システム」は、何らかの形でこの色彩の三属性に基づいています。
なお当然のことですが、分光分布も色の三属性も、スペクトルとの関係で物理的な考え方が基礎になります。
最初にカラーが持っている属性に基づいて、幾つかの基本的な分類をして見ます。
色彩の三要素とも言われます。最も基本的な分類と言えるでしょう。
色味の違いを表します。
スペクトル、人間の感覚等の基準に基づいて分類・配置します。
色の明るさを表します。
色の鮮やかさを現します。或いは色の純度。飽和度のことです。
明度だけの属性を持ち、色相と彩度を持ちません。
三属性全てを持ちます。
有彩色の中で各色相ごとに、最も彩度の高い色、飽和度の高い色のことです。
飽和度とは、それ以上彩度や明度を上げようとしても不可能なレベルです。
純色の中で、他の色との混合で作り出せない色のことです。加法・減法三原色は常に純色です。
色の中で、その「色み」だけしか感じられない色のことで、4色存在するとされています。その4色とは、赤、黄、緑、青
です。
この色は、それぞれその色の中に他の色みを感じることが出来ないとされます。
他の色、例えば橙(だいだい)色は、その中に赤と黄の色みを感じます。
或る色を注視ししていると、その色の反対色が残像として現れます。
この双方の色の関係を「心理補色」と言います。
スペクトルに基礎を持つ「物理補色」とは、殆ど共通です。
右図の赤を注視し、その後目を右の空白部に向けたとき、そこに赤の補色であるシアンの残像が見えてきます。
医師が手術室で着る手術衣は、薄い青緑色(シアン)をしています。手術衣だけでなくリネン類も同じ色に統一されています。
手術では血の赤を見続けることが多く、白衣だとそこに残像を感じてしまい、手術に集中できない為です。
心理四原色、心理補色の現象はへリングの「反対色説」(眼の常識・非常識 No-8 参照)の基礎になっています。
又、反対色説は「オストワルト表色系」における色相環の基礎になっています。
人間の目が識別できる色は、数百万色とも言われています。
これらのカラーを秩序を持って配列しようとするとき、無彩色と純色がその基礎・枠組みとなります。
無彩色と純色は、無限のバリエーションを持つカラー全体から見るとごく一部で、他の多くの色はその中間に位置します。 人間の目は、およそ150階調の無彩色と、300種の純色を識別できると言います。
無限のカラーバリエーションから、意図するカラーを特定する客観的な方法として、以下の2方法が考えられています。
加法、或いは減法三原色の混合割合で定義する方法です。
例えば、
C=0、M=50、Y=30、K=0 と言う混合比(アミ点濃度)は、鴇色●(ロータスピンク)になります。
三原色の混合(加法三原色、減法三原色)については、「加法混色とRGB」以降参照
無数の色を、混色によらず「色彩の属性」に基づいて配列・表示したものを「表色系」と言います。
「オストワルト表色系」「マンセル表色系」などが有名です。その他にも「DIN(ドイツ工業規格)表色系」「NCS(スウェーデン工業規格)表色系」等色々有ります。
以下の「分光分布曲線」と関係しています。
「色」と言う情報を、数値によって表すことを「測色」と言います。
測色には肉眼による「視感測色」と専門の装置を使う「器械測色」が有ります。 このうち、光の波長成分ごとに強さを測り、その光の特色を明らかにする装置を分光測色計(分光光度計)と言います。
又、分光分布の結果をグラフで表したものを「分光分布曲線」と言います。
光と色の様々な性質、特に「色の三属性」も、分光分布曲線という形で視覚化することで、より理解が得られるのではないか、と思います。
光を波長成分に分け、分光光度計を使い波長ごとにその成分の量を並べた時の曲線を分光分布曲線と呼びます。
分光分布曲線のうち、直接光源色を表したものを発光曲線、透過色を表したものを透過曲線、反射色を表したものを反射曲線と呼びます。
多くの場合、全ての波長を連続的に測るのでなく、水平方向に、左(短波長)から右(長波長)へ、10nm又は20nmごとに細分割し測定。
垂直方向に、光線強度を記入する。
下(0%)から上(100%)に分割。
上記尺度に基づき、各波長ごとに、光線強度を測定する。
(右図は青紫系の色光の場合)。
測定データをつなぎ合わせると、一つの曲線が得られる。
これにより、種々の光線強度分布が一目で分かる。
「光源と物体色」でも述べたように、色光は大きく言って「光源光・色」と、光源光が当たって、透過、或いは反射した「物体色」に分けることが出来ます。
発光曲線は、直接光源からの光線を表現したものです。
反射曲線は、光が物体に当たって反射される際の、光線の物理的性質を現します(透過曲線は物質を透過した光の物理的性質を表現します。少し複雑になるので以降反射曲線で代表します)。
反射光線の強度は常に、その面を照らす光線の強度を下回ります。
反射されなかった光は、その物質に吸収されます。吸収曲線を直接測ることは出来ませんが、反射曲線から逆算して吸収特性も読み取ることが出来ます。
(照射された光線に対し、反射曲線が70%で有ったとすれば、吸収された光は30%と言うことになります)
光源光=(反射光+吸収光) の関係です。
理想的な白は、光を100㌫反射することが期待され、理想的な黒は、光を100㌫吸収することが期待されます。これを理想反射、理想吸収と言います。
しかし 当たった光を全て反射、或いは吸収する物体は有りません。 必ず幾ばくかの誤反射、誤吸収は避けられません。 つまり、完全な白、黒は有り得ません。
※理想の白色にもっとも近い物質は、酸化マグネシウムの粉末、理想の黒色にもっとも近い物質は漆の黒だそうです。
新雪の雪原も理想白に近いと言えるでしょう。
又、繰り返し繰り返し太陽に焦がされている彗星の表面が、宇宙でももっとも黒い物体だ、と言うことを何かで読んだ記憶も有ります。
又、理想的な有彩色は、特定の波長だけを100㌫反射し、それ以外の波長域を完全に吸収することが期待されますが、実際は必ず誤反射、誤吸収が有ります。
つまり完全な純色も有り得ません。
右上図は、印刷に使われる黒インキの反射曲線と、 通常の白紙の反射曲線を表示したものです。
誤反射、誤吸収は避けられません。
勿論測る条件などによっても違ってきます。
右下図は、赤の反射曲線を表示したものです。
理想的な赤は、長波長域1/3だけを完全反射し、他の領域を完全吸収する筈ですが、実際は有り得ません。
長波長域からも誤吸収があり、他の領域にも誤反射が含まれます。
反射曲線を通して、色の三属性(色相・明度・彩度)をそれぞれ見てみましょう。
色相の違いは反射光のピークが、どの波長域に有るかによります。
短波長域にピークを持つ反射光は青色に見えます。
逆に長波長域にピークを持つ反射光は赤く見えます。
どんな物体も完全反射、完全吸収は有り得ず、実際の反射曲線は理想的な分光分布とは大きなギャップが有ります。
下左図はRGBの発光曲線、下右図は印刷インキCMYの反射曲線を表したものです(あくまでも目安です)。
中ではイエローが比較的、理想反射曲線に近いと言えます。
マゼンタは短波長域と長波長域に2つのピークを持っています。
短波長域(ブルー系)は、元々明度も彩度も低く、反射曲線のピークも低くなっています。つまり色味としても黒に近い色になっています。
※ グリーンの図が尖っているのは作図上の問題です。実際の分光曲線はこんなことは無いでしょうね。
光を多く反射する物質ほど明るく見えます。つまり明度は反射率に比例します。
反射曲線内の面積が大きいほど、反射率が高く明度が高いことになります。
右図の反射曲線は、何れも概ね平坦であることから全ての波長を満遍なく反射していること、つまり無彩色であることが分かります。
反射の度合いによって明度(明るさ)が変わってきます。
下から順に反射率が高くなり、黒から白に変わって行く状態を反射曲線で表しています。
明度の差は有彩色も共通です。
左図は、グリーンの反射曲線での明度の違いを表しています。
彩度(下記参照)の場合も事情は同じですが、色相によって最高明度が違ってきます。
これは波長の違いによる反射・吸収特性が違う為です。
可視光で言えば、スペクトル中央部、イエロー領域が最も反射率が高く、従って明度も高いのに比べて、スペクトル周辺部に行く程反射率が低く(大部分吸収してしまう)、照明をいくら強くしても明度の上昇は望めません。
更にその外側、赤外線、紫外線領域になると、人間にとって明るさを感じることが出来ず、可視光領域から外れてしまう訳です。
彩度とは鮮やかさのこと、つまりは色の純度です。
彩度は反射曲線の勾配とピークの高さによって表されます。
上記(理想反射、理想吸収)でも述べましたが、特定の波長だけを完全に反射し、他の波長域を完全に吸収できれば、真の純色、つまり理想的な最高彩度が得られますが、
実際に完全な反射も吸収も有り得ません。
他の波長域の反射が多く含まれる(=色が濁る)程、純度が低くなり、鮮やかさが失われます。
分光反射曲線との関係で言えば、曲線の勾配が急峻でピークが高い程、他の色との違いが際立ちます。つまり彩度が高くなります。
勾配が平坦になるにつれ色の差異が接近し、水平になったとき、他の波長域との区別、つまり色の違いが失われて彩度は0となります。 要するに無彩色(ニュートラルカラー)となります。
右図では反射曲線内の面積はほぼ同じ(つまり明度はほぼ同じ)です。
しかし反射曲線の勾配の違いで、彩度が変わって来ることを示しています。
彩度を上げるとき、山のピークだけを上げることが理想です。しかし反射率には限界が有り(飽和度)、光源を強くしても山の部分は変わらず、谷の部分だけが上がることになりがちです。 その場合、明度は上がるが彩度は逆に下がる結果となります。
反射率は色相によっても違い、赤などは比較的高い彩度を得られますが、紫系は赤紫・青紫のどちらも、幾ら光源を上げたからと言って、それに比例して彩度が上がる訳ではありません。
結局スペクトルの中心から離れて、長波長域・短波長域それぞれの両端に行くに従って可視光領域から外れ、人間の目に「色」として感じにくくなる訳です。
可視光領域波長から完全に外れた時、いくらその光源エネルギーを上げても、赤外線、或いは紫外線が強くなるだけで、色としての感受性は示されず、黒いままです。
減法三原色の色材(インキ、顔料など、或いはフィルタ)による混合で、それぞれの補色が吸収(減色)され、減法混色が生じる状況を、分光分布によって模式的に表してみました。
減法混色において、減法三原色は一次色となります。
減法三原色の、2色の混合で出来る加法原色は二次色になります。
右図で、例えば1次色のシアンとイエローの混合で、それぞれの補色が吸収され、グリーンが残ります。
同じく、シアンとマゼンタの混合でブルー、マゼンタとイエローの混合でレッドが残る状況を示しています。
二次色である加法原色に、さらに残りの減法原色を加えると、全ての(誤反射を除く)光が吸収され、三次色としての、K(ブラック)となる状況を最下段で示しています。
減法混色では、色が重なるたびに補色部分が減色されて暗くなって行きます。