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グラフィックとカラー
「カラー」はコンピュータグラフィックで最も重要な要素の一つです。
最も重要な要素は「オブジェクト」かも知れませんが、オブジェクトもカラーが設定されていなければプリントアウトすることが出来ません。 いや、オブジェクトを見ることも、それが有ることさえも分からない場合が有り得ます。
このことはコンピュータグラフィックに限りません。
そもそもわれわれが「モノを見る」と言うことは、その「形をしたカラー」を見ている訳で、 全くカラーの無い無色透明のものは見ることが出来ません。
空想物語の「透明人間」の話は、透明のモノは見えない、と言うことを明らかな前提としています。
最近の物理学で問題になっている「ダークマター」等は、その存在量と比較しての「見えにくさ」が一番のキーワードになっている訳です。
光とカラー
カラーの前提は光です。
光の全く無いところではカラーも、従ってモノも見えません。カラーとは光とモノとの相互作用です。
加法混色・減法混色の仕組みなど、カラー全般に渡って光が基礎になっています。
カラーと視覚系
カラーを認識する為には当然のことですが、人間の視機能に依存します。
眼の光学的な特性、或いは脳による演算など。 こちらもカラーを理解する上で必要となる問題でしょう。
と言うことで、人間が物を見る為に次の三つの要素が必要です。これを「視覚現象の三要素」と言います。カラーはこの三要素の相互作用です。
このページでは先ず最初に「光とカラー」について触れ、その後「カラー」について立ち入ってみたいと思います。 しかし「光」は物理現象の、従ってモノの成り立ちのコア概念です。
「光とカラー」の周辺情報として、「電磁波とカラー」と言う管理人の覚書程度のページを別途設けました。殆どあてにならない雑文ですが、興味の有る方はご覧下さい。
又人間の視機能に関する周辺情報として「眼の常識・非常識」と言うページを設けています。視覚系に関連する情報として、こちらも参照して下さい。
着目する性質によって分類も変わってきますが、「視覚現象の三要素」に基づいて光と色の関係を分けると、概ね次のようになるでしょう。
「光源」は、当然ですがそれ自体が光を発しているものです。
光は電磁波の一種としてエネルギーそのものと言えます。光源は様々な仕組みでエネルギーを発生しており、その発生メカニズムによって、光の性質も変わってきます。
光の発生メカニズムについて、ここでは代表的なものについてだけ触れておきます。
地球上の全ての生物にとって、光源として最も基本的で一般的、そして重要なのは太陽光です。 太陽は表面温度が約6000度で、この温度に対応した色としてややオレンジがかった白色に見えます。 この光をプリズムに通すと、連続したスペクトルに分光されます。
地球上の植物がこの太陽光を利用してデンプンを合成し、動物も又それに依存して生きています。
人間を含め視機能を持つ種は、太陽光の波長に合わせる形でそれを進化させてきています。 例えば人間にとっての可視光線は、太陽が発生する電磁波の中心的な波長域と重なります。
太陽のエネルギー発生メカニズムは核融合反応です。
その意味で核融合は、本来人間にとって一番馴染みの深い現象と言って良いのかも知れません。
4個の水素原子核が1個のヘリウム原子核に変わる時、ホンの僅か質量が消滅します。その消滅した質量が太陽の熱と光、つまりはエネルギーの元です。
水素から鉄までの元素は、恒星のこの核融合反応の過程で作られます。※ 注1
注1「太陽光と核反応」覚書
白熱電球、焚き火など、こちらも一般的な発光メカニズムです。
一般に物質は温度に対応した波長の電磁波を発生します。
白熱電球で言えば、フィラメントと呼ばれるタングステン線に電流を流し、その「熱放射」による光を利用します。
物体が電流などエネルギーを受けた時、物体を構成する原子が激しく振動し高熱になる訳ですが、その際重い原子核より、軽い電子が激しく振動し、その振動エネルギーが光として放出されるのです。それが熱放射です。
つまり熱放射による発光は、主に電子の振る舞いによります。
白熱球は電気エネルギーの大部分が熱として消費され、光として利用されるのは数㌫に過ぎません。
熱放射の性質上、長波長域から短波長域までのスペクトル成分を連続的に含んでおり、電圧を上げたときの分光分布が太陽光と似ているので、自然で親しみの有る光として感じられ、エネルギー効率は悪いものの、現在でも捨てがたいものとして広く使われています。
同じ電子の振る舞いに由来する反応ですが、蛍光灯は白熱電球とは全く違った発光メカニズムを持っています。
一般に物質が外部からエネルギーを受け取った時、そのエネルギーを吸収した電子はそのエネルギーに応じた、より高い旋回起動に上がります。これを「励起」と呼びます。
励起状態の電子は直ぐに又低い起動に落ちてくるのですが、その際余分なエネルギーを光として放出します。
この現象をルミネッセンスと言うのですが、受け取るエネルギーの違いによって、電気ルミネッセンス、化学ルミネッセンスなど沢山の種類が有ります。 蛍の光や或る種のキノコの発光、燐光等もルミネッセンスの一種です。ルミネッセンスによる発光には熱を伴いません。
蛍光灯は放電管と呼ばれるガラス管の中で放電を起こし、電極から飛び出した電子と放電管に封じ込めてある水銀原子との衝突によって紫外線を発生させます。
その紫外線が、蛍光管内部に塗られてある蛍光物質に当たって光を出します。TVやカラーモニタの発光原理も同じです。
この場合、紫外線の発生と光(可視光線)の発生と言う、二重のルミネッセンス現象を経ています。
蛍光灯は電気エネルギーを直接光に変換するので、白熱球に比べ熱を持たず、光変換のエネルギー効率も高いので、同じワット数で比べたとき、白熱球よりはるかに明るくなります。
又蛍光物質の種類を変えることで、様々な分光分布を持つ光を作ることが出来ます。ブラックライトのように紫外線だけを発生させるものや、反対に美術館などで使う為に紫外線を全く出さないものも作ることが出来ます。
最近ではLED等が普及してきています。
宇宙での超新星爆発などは、核融合反応の燃料を使い果たした星の、重力崩壊によるエネルギー解放がその源だと言えるでしょう。
※ 注1
水素は宇宙誕生の初期、およそ38万年後に電子が陽子に捉えられた時出来上がりましたが、それ以外の元素で、ヘリウムから鉄までの元素は、恒星の核融合反応で出来ます。鉄より重い元素は核融合反応レベルの温度と圧力では作られず、この超新星爆発の超高温・超高圧の中で作られ、宇宙にばら撒かれます。われわれの身体を含めた全ての元素はそう言う過程で合成され、ばらまかれ、そうして又再結集されたものです。
「物体色」は光源と物体との相互作用です。光源だけ、或いは物体だけでは色も成立しないし、片方の属性を規定しただけでは、物体色がどうなるか、それも分かりません。
そもそも「物の色」とはなんでしょうか?
文芸評論家の大御所だった小林秀雄(1902~1983)は、「色とは壊れた光である」と言ったそうです。つまり全てのスペクトル成分が調和して白色(無色)となっていた光が、物体にぶつかることで調和が壊れ、その一部だけが反射・透過します。 反射・透過された光が眼に入り、 その物体色として認識されると言うことです。
光は、壊れない限り中立的な白色のままです。壊れて始めて「色」としての正体を表すと言う訳です。
小林秀雄と同じ言い回しを使うのはいささかシャクですから、私は「色はバランスの崩れた光」という言い方をしたいと思います。マッ、同義反復にすぎませんが。
最初に理屈を言ってしまうと、そもそも物質に「色」が有る訳では有りません。物質を構成する元素に、スペクトルの特定領域の光を選択的に吸収したり、反射・透過させる性質、「選択吸収」、「選択反射・透過」特性が有るだけです。
その、反射或いは透過した特定の波長域に対し、人間の目と脳は特定の「色」として感応するだけです。
光の成分を波長ごとに表したものを「分光分布」、それをつないでグラフにしたものを「分光分布曲線」と言います。
吸収、反射についての分光分布曲線を「吸収曲線」「反射曲線」と言います。
吸収・反射曲線は相補的です、つまり補い合って白色光の分光分布になります。
分光分布については、「色彩の三属性」との関係で詳述します。※ 分光分布 参照
バランスの取れた光=白色光がリンゴに当たっている場合を考えます。
成熟したリンゴの皮にはアントシアンと言う物質が含まれており、アントシアンは短波長域の光を選択的に吸収し、長波長域を反射します。
反射された長波長域の光が眼に入って、赤い感覚を引き起こします。
モノにそもそも特定の「色」が有る訳では無く、色とは、光源・物体・人間の視覚系の相互作用によるものだと言うことを、このリンゴの例で示します。
リンゴに短波長光(青)だけを当てたとき、アントシアンはこの光を全て吸収してしまい、反射する光が無いことになります。結果、リンゴはグレーに見えます。
また、このリンゴを、例えば高速道路トンネルの、ナトリウム光線(黄色)の下で見たら、全く別の色に見えるでしょう。 つまり物質自体に「色」が有るのでは無く、「色」とは、その物質を構成している元素と、光と、そしてそれを見る人間の眼の視覚機能との総合的な現象だと言えます。
だから人間とは違う感受性の目を持つ昆虫は、同じものを見ても人間と違う色に見ています(…の筈です)。 モンシロチョウなどは人間に見えない紫外線の領域を見ているようです。
透明な物質に見られる「透過」も考え方は同じで、
やはり、選択的吸収がなされ、残りが透過されます。
ただ この場合、表面での反射があり、又、光の透過経路が長い場合、その経路全体を通して吸収されるので透過光はその分少なくなります。
反射は表層的な現象ですが、透過はその物質の厚さに伴って吸収量が増大してゆきます。
光が、ある程度の厚みを持った物質を通るとき、透過の全経過を通じて光が吸収されて行き、最後、全く透過されない場合も有り得ます。 無色透明とされる水でも、数百メートル以上の深海では殆ど光が届かず暗闇の世界となります。
※ 小さなグラスに注いだ赤ワインは綺麗な赤紫に見えますが、瓶に入った赤ワインは黒く見えます。
これには二つの理由が有ると考えられます。
光が当たる物体の表面特性、光の入射角度等により、光の吸収、従って反射の状況が異って来ます。
光が物体に当たると光は物体の表層部に進入します。
石でも金属でも、光が中に進入するように思えません。しかし光子レベルで言えば物質表面は穴だらけなんでしょうね。
光と、物体を構成する元素との相互作用により、選択吸収、選択反射されるのですが、物体が緻密で表面が滑らかに磨き上げられているような場合、特に入射角度が浅い場合には、光は物質の内部に入り込む前に表面で反射される場合があります。これが「表面反射」です。
表面反射の場合光は、物体による選択吸収、選択反射される前に、その表層で反射されている訳で、反射光は物体色ではなく光源色に傾きます。 鏡面処理されてある金属などはこの例です。 この現象は「光沢」とも言われます。
太陽光を含めた「自然光」はあらゆる方向にランダムに振動している電磁波の集合・重なりです。その波がガラスや水面に当たって反射する時、特に入射角が浅い場合、特定の方向の波だけが吸収され、それと直交する波だけが反射する場合があり得ます。それが「偏光」です。
偏光レンズは、反射された偏光と直交する波成分だけを通すように作られたレンズで、水面やガラスからの反射を遮る効果が有ります。
光やカラーの物理的特性がどうであれ、人間にとって最終的には視覚系によって認識されることで完結すると言えます。
その意味で、人間の視覚系はカラー談義の全編に顔を出す訳ですが、例えば………、
等など参照して下さい。